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手順1 つなぐ鍵を二層で決める
集めることから始めると、後でつなげられません。先に決めるのは、記録をつなぐ鍵(キー)です。共通して付けるのは、案件番号、日付(作業日と記録日を分ける)、担当者、場所の4つです。
担当者は、自社の社員、協力会社の作業員、発注者の監督員を混ぜず、区分を持たせます。協力会社は個人単位か会社単位かを先に決めます。安全書類や作業日報で個人まで求められるなら個人単位、そうでなければ会社単位で足ります。決めずにおくと、交代のたびに紐付けが切れます。
もう一層は、案件の中を区切る明細キーで、ここが事業ごとに違います。下水道の管路調査では、案件番号の下にスパン番号を置きます。写真も異常項目も測点も、案件ではなくスパンに紐づくためです。建設施工なら工区と工程、工具販売なら製番、犬のトリミングなら個体IDが明細キーです。犬は飼い主IDでは代用できません。2頭目や譲渡で崩れるためです。
見つけ方は、「その案件の中で複数回発生し、それぞれ別の写真や記録が付くもの」を探すこと。決めないと、写真も記録も案件にぶら下がるだけの山になります。
案件番号は、年度2桁+業務区分+連番で「26-SW-014」のように組み立てます。業務区分は管路調査、建設施工、工具、映像・資料、犬関連のように事業の数だけあれば足ります。体系を変えたときは番号を振り直さず、新旧の対応表をつくり、旧番号も別項目として残します。
手順2 原本・読み物・データに分ける
置き場所の棚卸しは業務フロー診断の進め方に書きました。次は、1件ずつ「原本として残す」「読み物として残す」「検索と集計のためにデータにする」へ割り振ります。どこまでをデータ化するかの線引きが、これでしやすくなります。
| 実物 | 扱い | データにする範囲 |
|---|---|---|
| 管路調査の手書き野帳 | 原本を保管 | スパン番号、距離、異常項目とランク、写真番号 |
| 提出したPDF報告書 | 原本を保管 | 案件番号、提出日、発注者、様式の版 |
| 工具の見積・受注メール | 読み物として残す | 決まったことと、その日付 |
手順3 表記ゆれと例外の置き場所
取引先名、現場名、工種、犬種。同じものが別の書き方で入っていると、集計で別のものとして数えられます。名前を洗い出して正式名を1つ決め、別名を対応表に寄せ、入力欄を選択式にします。
備考に情報が集まりすぎているなら、それは、そこに何度も出てくる言葉を項目として切り出す合図だと考えています。例外は「例外区分(選択式)+自由記述」の2欄で持ち、区分に「その他」を入れます。
- 四半期に一度、「その他」の記述をまとめて読む
- 繰り返し出る事象を新しい区分へ昇格させる。件数の目安は先に決める
- 昇格を判断するのは、台帳の管理者1名と決める
- 過去分は振り直さず、昇格日以降だけ新区分を使い、集計は対応表で読み替える
台帳に無い取付管口は区分「台帳外の取付管」に置き、位置と口径を自由記述に書きます。写真番号と距離の食い違いは、記録を書き換えず区分「要確認」を立て、確認者と日付を追記します。
手順4 社内台帳と提出様式を分ける
管路調査の報告書は発注者の様式に合わせて提出し、凡例は発注者と年度で変わります。データには、自分で決められる層と決められない層があります。
台帳を発注者に合わせにいくと、発注者が増えるたびに台帳が分裂し、自社の集計ができなくなります。異常項目マスタは社内で1本に決め、発注者ごとの記号や凡例は、社内コードから変換する対応表を別に持ちます。年度で凡例が変わったときに直すのは、過去のデータではなく対応表の「適用年度」の列です。
手順5 写真の紐づけ先を種類で変える
種類によって、紐づく先も、消してはいけないものも違います。
| 種類 | 紐づく先 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 管路調査 | スパン | 撮影前に案件番号の黒板を1枚撮る |
| 赤外線の外壁診断 | 撮影面 | 熱画像と可視画像は1組。片方だけ消さない |
| ドローン測量 | 位置情報 | 編集ソフトでEXIFが落ちる。原本を残す |
| 映像素材 | 案件番号 | 容量が大きい。台帳には置き場所だけ持つ |
| 犬のトリミング前後 | 個体ID | 飼い主ではなく犬に紐づける |
ファイル名は「20260829_26-SW-014_S003_012.jpg」のように、日付_案件番号_明細キー_連番で揃えます。日本語、空白、全角記号は入れません。連番は3桁のゼロ埋めにします。桁が揃わないと、10が2の前に並びます。
手順6 上書きと追記を分ける
現在の状態(進行状況、連絡先、犬の飼い主)は上書きでかまいません。起きた事実(作業した、提出した、差し戻された)は追記で、日時と担当者を添えて残します。ファイル名で世代を管理するのをやめて台帳に履歴の行を足すと、どれが最新かを見る場所が1つに定まります。
移行で何を持っていくか
過去分をどこまで遡るかは、次の3つに分けて決めています。
- 法令や契約で保存年限が決まっているもの … 参照頻度では判断しない。アスベスト調査の記録や税務書類がこれにあたる
- 保証・瑕疵の期間で決まるもの … 建設施工の記録は、責任を負う期間を基準にする
- 参照頻度で決めてよいもの … 管路調査の記録は、次回調査の周期を基準にする
移行の範囲と、原本の保存義務は別に扱ってください。範囲外にしたものも、原本を保管し、案件番号と日付と保管場所を一覧にしておけば足ります。
ククルFMがどう進めているか
鍵を先に決める順番は、代表がプラント向けの海外プロジェクトで見てきたやり方から来ています。プラントでは、計器や信号のタグ番号を最初に決めます。番号が決まると、P&ID、ループ図、試験成績書、引渡書類が同じ番号で串刺しになります。桁の構成を変えると全図面と全試験記録に改訂が及ぶため、番号は途中で変えず、対応表で吸収します。
着手するときにお願いしているのは3つです。探すのにいちばん困っている記録を1つ選ぶ。その記録に付いている項目を紙に書き出す。案件番号と明細キーが入っているかを確かめる。入っていなければ、そこが最初の作業です。実装まで含めた進め方はFDE・AI実装支援にまとめています。
よくある質問
紙の帳票の読み取りは、AIに任せられますか。
読み取りと名寄せは分けて考えています。活字の帳票と、番号・日付・数量の欄はかなり読めます。読み違えが起きやすいのは、手書きの数字、押印と重なった文字、チェック欄、現場の黒板です。読み取り結果はそのまま台帳へ入れず、案件番号と日付だけを人が突き合わせる工程を残します。名寄せは候補の抽出までで、正式名は請求書や契約書の表記に合わせて人が決めます。
発注者ごとに様式が違い、統一できません。
統一しようとせず、社内の台帳を1本に決め、発注者ごとの変換表を別に持つ形をお勧めしています。様式が増えても、直すのは変換表です。
既存のシステムを入れ替えないと進みませんか。
入れ替えを前提にはしていません。既存システムから出せる項目を確かめ、出せない部分だけを補う進め方もあります。判断の軸はSaaS導入と個別開発の選び方に整理しています。
データを整えた後の進め方は現場DXとは何かに、 AIをどこまで任せるかはAI導入が現場に定着しない理由にまとめています。 ご相談はお問い合わせから承ります。