この記事の対象
- 改善したい気持ちはあるが、どこから手を付けるかが決まらない
- 現場と事務所で、同じ情報を何度も入力・確認している
- システムの相談をする前に、自社の業務を整理しておきたい
何を「業務フロー」と呼ぶか
ここでいう業務フローは、作業手順だけを指しません。次の3つの流れをまとめて見ます。
- 人の流れ … 誰が、何を、どの順番で行うか
- 情報の流れ … その作業で、どの情報がどこから来て、どこへ行くか
- 判断の流れ … 途中で誰が何を決めるか。決まらないと何が止まるか
このうち抜けやすいのが、判断の流れです。作業そのものは短くても、「上長の確認待ち」「発注者の回答待ち」で数日止まっている、ということは珍しくありません。作業時間だけを数えると、この待ち時間が見えなくなります。
進め方の5ステップ
1. 対象を決める
全社を一度に見ようとすると、図が大きくなるばかりで結論が出ません。1つの帳票、1つの現場、1つの部門、1つの顧客対応プロセスのいずれかで区切ります。選ぶ目安は、頻度が高いこと、関わる人が多いこと、手戻りが多いことです。
2. 現場・事務・管理者の3方向から聞く
同じ業務でも、立場によって見え方が違います。現場は「事務所からの連絡が遅い」と言い、事務は「現場から情報が上がってこない」と言う。このズレ自体が、課題のありかを示しています。1方向だけの聞き取りで図を描くと、その人の困りごとだけが大きく見える図になります。
3. 情報の置き場所を棚卸しする
紙、Excel、共有フォルダ、メール、チャット、写真フォルダ、既存システム、個人のパソコン。情報がどこにあるかを一覧にします。
| 情報の種類 | 置き場所 | 更新する人 | 見る人 | 探しにくさ |
|---|---|---|---|---|
| 作業記録 | 紙 → 事務所でExcel | 現場担当 | 事務、管理者 | 日付でしか探せない |
| 現場写真 | 端末のカメラロール、共有フォルダ | 現場担当 | 事務、発注者向け報告 | 案件との結び付けが手作業 |
| 台帳 | Excel(複数世代) | 事務 | 全員 | どれが最新か分からない |
この表をつくる目的は、「同じ情報が2か所以上にある」ものを見つけることです。二重管理は、更新漏れと問い合わせの主な発生源になります。
4. 課題を型に当てはめる
出てきた困りごとを、次の5つの型に当てはめると、対策が考えやすくなります。
- 二重入力 … 同じ情報を2か所以上に入れている
- 転記 … 別の様式に書き写している
- 確認待ち … 誰かの返事を待って止まっている
- 手戻り … 後工程で差し戻され、やり直している
- 属人化 … その人にしか分からない判断がある
私たちの下水道の管路調査でいえば、現場でメモした距離と異常項目を、事務所で報告書に転記し、さらに発注者の様式に合わせて書き直す、という形になることがあります。同じ数字を3回書いていることになり、書き写しの回数が増えるほど、食い違いが起きる余地も増えます。
5. 改善テーマとKPIを絞る
洗い出した課題を、頻度、手戻りの大きさ、関わる人数で並べ替え、上位3つ程度に絞ります。あわせて、改善したかどうかを見る指標も3つ程度に絞ります。業務時間、対応日数、差戻し、入力漏れなど、すでに社内で使われている言葉から選ぶと、後で振り返りやすくなります。
聞き取りで実際に確認していること
聞き取りでは、次のような質問をしています。
- 一日の仕事を、朝から順に教えてください
- その情報は、どこから来ますか(紙、写真、口頭、メール、チャット)
- 入力したあと、それを見るのは誰ですか
- 間違いに気づくのは、どの時点ですか
- やり直しになるのは、どんなときですか
- 誰かの確認を待っている時間はありますか
- あなたにしか分からないことはありますか
- 面倒だと思いながら、仕方なく続けていることはありますか
逆に、最初の段階では「どんなシステムがほしいですか」とは聞きません。道具の話から入ると、要望リストが集まるだけで、どれを先にやるかが決められなくなるためです。
図にするときの粒度
細かすぎる図は使われません。私たちは、1つの業務を1画面(紙なら1枚)に収まる粒度で描くようにしています。分岐は主要な2〜3本にとどめ、例外は図に描かず、別表に「どのくらいの頻度で起きるか」「誰が判断するか」を書きます。
図の目的は、関係者が同じ絵を見て「ここが詰まっている」と指させることです。網羅性を上げるほど読む人が減る、という関係があるので、最初から完全な図を目指しません。
診断で出てくるもの
- 現状業務フロー
- 課題と優先順位の整理
- データ一覧
- 要件定義のたたき台
- KPI設計
- 導入ロードマップ
この6点は、12か月ロードマップの1〜3か月の成果物と同じものです。ここまで揃うと、自社でつくるか、SaaSを使うか、外部に頼むかの判断ができる状態になります。
ククルFMがどう進めているか
私たちは、建設・インフラの現場を自社で持っています。そのため、現場の聞き取りでは、作業に同行させていただくことがあります。話を聞くだけでは出てこない手順が、実際の作業を見ると分かるためです。
もうひとつ気をつけているのは、言葉をそろえることです。現場と事務で、同じものを別の名前で呼んでいることがよくあります。この状態のまま図を描くと、同じ工程が2つに分かれて見えたり、逆に別の工程が1つに見えたりします。用語の対応表を1枚つくるだけで話が進むことも、実際にあります。
よくある質問
業務が忙しく、聞き取りの時間が取れません。
立場ごとに分けて、1回1時間程度でお願いすることが多いです。現場については、作業に同行させていただく形で、業務を止めずに確認できる場合もあります。
図はどちらがつくりますか。
こちらで用意し、内容を見ていただく形で進めます。図を描くこと自体をお願いすることはありません。
診断だけの依頼はできますか。
できます。診断の後に実装をご依頼いただく前提ではありません。成果物は社内での検討や、他社への相談にもお使いいただけます。
可視化した後の進め方は現場DXとは何かに、 支援の範囲と体制はFDE・AI実装支援にまとめています。