ドローンで撮った赤い熱画像を見せられると、それだけで「調査は終わった」という印象を持ってしまいがちです。ですが、外壁タイル等の調査には、建築基準法の定期報告としての話と、修繕のための下調べとしての話という、別の二つの側面があります。この記事では、その違いと、赤外線調査を定期報告に使う場合に基準となる告示・ガイドラインについて整理します。何万円で済むという表や、架空の削減率、足場が不要になるという保証、定期報告の代行については書いていません。対象になる建物や周期は、特定行政庁と所有者の義務によって決まります。
可視光での空撮(当社が使っているのはAir 2S)については映像制作・編集のページをご覧ください。当社の映像用ドローンは可視光用で、熱は調査側の別のカメラを使っています。この二つは混ぜずに使い分けています。
告示とガイドラインが基準になる
定期報告の制度では、平成20年国土交通省告示第282号により、手の届く範囲の打診等に加えて、おおむね10年に一度、落下により危害を加えるおそれのある部分について全面的な打診等を行うことが求められています。令和4年の改正では、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を持つ無人航空機による赤外線調査が、打診に代わる方法として明確化されました。その「同等」の判定は、一般財団法人日本建築防災協会が出している「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参照する、と国土交通省が案内しています。地上に設置した赤外線調査も、同じガイドラインの対象です。ただ、「ドローンを飛ばしたから報告が終わる」というわけではありません。精度や天候、近接確認の条件は、ガイドラインと発注仕様によって決まってきます。
目的を先に分ける
現場に入る前に、私たちはまず目的を分けるようにしています。定期報告なのか、修繕のための下調べなのか、それともまだはっきりしないのか。建物の種類や特定行政庁がどこか、仕上げがタイルかモルタルか乾式か(分からなければ「不明」のままにします)、飛行させるかどうかとその許可・空域、熱カメラを実際の調査用として使うのか、それとも可視光ドローンだけで熱としては使わないのか。こうした点を先に整理します。乾式の石貼りなどは、告示の書き方が湿式タイル等とは違うので、仕上げが分からない状態のまま「剥離が確定した」「補修範囲が確定した」「足場が不要」といったことは、まだ言わないようにしています。
向く使い方と向かない使い方
ドローンによる赤外線調査が向いているのは、広い面のあたりをつけること、日時と方位を記録に残すこと、次に行う近接調査や打診の範囲を絞るための下調べです。ガイドラインの条件を満たしていれば、定期報告としての赤外線調査そのものにも使えます。逆に向かないのは、熱画像1枚だけで定期報告を終えようとすること、雨漏りの経路を断定すること、費用が何%削減できるという話をすることです。曇りや雨、風、濡れた壁の日は、熱の模様が診断に使えないこともあります。飛ばせることと、報告に使えることは別の話だと考えています。
現場での調査の流れ
実際の調査では、まず図面と特定行政庁への確認が必要かどうかを所有者の方に確認していただきます。法令上の要否を当社が断定することはありません。次に飛行ルート、障害物、第三者の存在、空域を確認します。無人航空機の登録と許可については国交省のページを参照しています。可視光と熱の画像は別のファイルとして残し、熱のパレット画像そのものを診断マップとして扱うことはしません。疑わしい箇所が見つかれば、近接調査や打診の候補として記録しますが、その候補だけを飛ばして補修の見積りにすることはありません。当社には赤外線建物診断技能士が在籍していますが、技能の範囲や報告書の書き方は、その資格と発注条件のほうが基準になります。
公式
- 定期報告制度における外壁のタイル等の調査について(国土交通省)
- 一般財団法人日本建築防災協会
- 無人航空機(国交省)
- 調査・清掃事業
- 管路の損傷判定(写真と記号の突き合わせは下水道側)
本記事は定期調査の代替ではありません。判断の最終責任は調査する人・報告義務者にあります。